救急車、呼ぶべきか?呼ばなくていいのか?-急性アルコール中毒-
「酔って倒れている人がいるけど…救急車を呼ぶべき?」
「意識があるけど、このまま放っておいていいの?」
急性アルコール中毒を見かけたとき、誰もが一度は迷う問い。しかし、"判断を誤ると命の危険"も。

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背景と課題
救急車の約7%は「急性アルコール中毒」による出動
  • 特に都市部・繁華街では頻発し、週末や深夜帯に集中
  • 救急現場では酩酊と中毒の見極めが難しく、対応が属人的
現場の実体験から見えた課題
看護師の知人によると、繁華街での急性アルコール中毒者に対して、現場での的確な応急処置があれば、救急車が不要だったケースが少なくなかった
実際に、看護師がその場にいて対応した際には、救急隊から何度も感謝されるほどの効果があった。
救急隊は「状態把握」や「受け入れ先確保」に大きな負担を抱えており、軽症者対応が重症患者の搬送に支障を来すという現場の声も明確

問題の核心
判断できない市民」が、「判断に時間を要する救急隊」へ託す構造により、限られた医療リソースが軽症対応に取られ、真に救うべき命を脅かしている

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この資料の目的
1
判断基準の明確化
救急要請すべきか迷ったとき、どう判断すればいいか?を明らかにする。
2
わかりやすい基準の共有
市民の視点でわかりやすく、再現可能な基準を共有する。
3
命を守る情報提供
救急車の適切な活用を通じて、本当に救うべき命を守るための情報リテラシーを高める。

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救急車要請の判断に必要な10の視点
緊急度を測るフレームワーク
呼ぶべきか迷う市民心理
中毒進行のサイン
救急車を呼ぶべき症状例
観察・判断のためのチェックポイント
「回復体位」と対応手順
やってはいけない対応
見逃してはならない変化
呼吸異常の見分け方
救急隊への情報伝達

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緊急度を測るフレームワーク
GCS(意識レベル)
15(正常)〜3(意識なし)のスケールで評価。目の動き、言語反応、運動反応を総合的に判断する指標。数値が低いほど意識障害が重度。
バイタルサイン
呼吸数:12~20/分が正常。24以上または10未満は危険信号。呼吸の深さや規則性も重要な判断材料となる。

最初に確認すべきポイント:「呼吸しているか/意識はあるか?」が判断の出発点です。酩酊状態と意識障害の見極めが救急要請判断のカギとなります。

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市民が迷う瞬間とは?
よくある「グレーゾーン」の例
倒れているが、呼びかけには応じる
名前を呼ぶと反応はあるが、起き上がれない。会話が成立しない場合は注意が必要。
吐いた後に意識はある
嘔吐後に意識が戻ったように見えても、再び意識レベルが低下する可能性がある。
一時的に起きるが、すぐ寝てしまう
覚醒と睡眠を繰り返す場合、意識障害が進行している可能性がある。
「これって救急車?」という迷いは自然な反応。重要なのは「様子を見るときの判断軸」を持つこと。

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中毒進行のサイン
1
軽度
  • ろれつが回らない
  • 立てない
  • 眠い
2
中等度
  • 呼びかけに反応鈍い
  • 繰り返し嘔吐
  • 意識低下
3
重度
  • 反応なし
  • 呼吸異常
  • 痙攣
  • 失禁
  • 体温低下

軽症に見えても時間とともに進行するため、継続的な経過観察が重要です。特に短時間での症状悪化には注意が必要です。

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救急車を呼ぶべき症状
1
意識がない/呼びかけに反応しない
名前を呼んだり、肩を軽くたたいても反応がない場合は即時に救急要請。
2
呼吸が止まりそう/浅く不規則
呼吸が10回/分未満や24回/分以上、または明らかに呼吸が苦しそうな場合。
3
嘔吐して仰向けで寝ている
嘔吐物による窒息リスクが高まり、即時の体位変換と救急要請が必要。
痙攣/けいれんが止まらない
アルコール離脱症状やアルコール性てんかんの可能性もあり、緊急対応が必要。
チアノーゼ(顔色や唇が青紫)
酸素不足の重大なサインであり、即時の医療介入が必要な状態。

1つでも当てはまれば即、119番してください。判断に迷う場合は、#7119(救急相談センター)に相談することも有効です。

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回復体位と対応手順
嘔吐や意識障害時に最も重要な姿勢
横向きに寝かせる
下側の腕は前に伸ばし、上側の膝を曲げる
頭を後屈させる
気道を確保するために顎を上げ、口を下に向ける
継続的に観察する
呼吸状態や意識レベルの変化に注意し続ける

「救急車が来るまでの時間」こそ命を分ける対応を。回復体位は嘔吐物の誤嚥・窒息を防止する重要な応急処置です。

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やってはいけない対応
仰向けで放置
嘔吐物による窒息リスクが高まります。意識障害のある人は必ず横向きに寝かせましょう。
無理に起こす・揺さぶる
頭部外傷がある場合に症状を悪化させる可能性があります。静かに声をかけ、反応を確認しましょう。
飲食物を与える
嘔吐や誤嚥のリスクが高まります。意識障害がある場合は絶対に口から何も与えないでください。
口に物を入れる(けいれん時)
舌を噛むからと口に物を入れると、窒息の危険があります。けいれん時は周囲の危険物を遠ざけるのみにしましょう。
鼻血で上を向かせる
血液が気道に流れ込む危険があります。前かがみで鼻を押さえるのが正しい対応です。

善意のつもりが命取りになることも。正しい知識に基づいた対応が重要です。

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観察すべき変化
家族や周囲が見逃しやすいポイント
呼吸の変化
呼吸の速さ・浅さ・苦しさが増している場合は危険信号。特に呼吸音が「いびき」のようになった場合は要注意。
顔色と発汗
顔色が青白い・紫色になる、冷や汗をかいている場合は循環不全のサイン。皮膚が冷たく湿っていないか確認。
意識の変化
反応が遅い、名前を呼んでも答えないなど、意識レベルの低下は重篤な状態を示す可能性。
言語障害
話せない・ろれつが回らない状態が続く場合は、脳の機能障害を疑う必要あり。
左右差
手足・顔の左右差(麻痺)がある場合は、脳卒中の可能性もあり、アルコール中毒と誤認しないよう注意。

「いつもと違う」は立派な危険サイン。些細な変化でも見逃さず、継続的に観察することが重要です。

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救急隊への伝達ポイント
必須情報テンプレート(家族・通報者向け)
1
発症時刻・経過
「何時頃から様子がおかしくなったか」「どのように症状が変化したか」を時系列で
2
現在の症状
「意識レベル」「呼吸状態」「外傷の有無」など、現在観察できる症状を具体的に
3
既往歴・服薬歴
「持病」「普段飲んでいる薬」「最近の体調変化」など、健康状態に関する情報
4
アレルギー歴
「薬や食品のアレルギー」があれば必ず伝える
1
直前の行動
「飲酒量・種類」「入浴中だったか」「転倒したか」など、発症前の状況
2
バイタル
測定できれば「脈拍」「呼吸数」「体温」など
3
普段との違い
「普段と違う点」は主観的な情報でも非常に重要

的確な情報提供により、救急隊の初期対応が数分短縮されることもあります。これが救命率向上につながります。

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参考・出典一覧
※以下の公的機関・医療文献・ガイドラインをもとに作成しました。
公的機関
  • 総務省消防庁
  • 東京消防庁
  • 厚生労働省
  • 日本赤十字社
  • 各自治体の救急マニュアル
医療情報サイト
  • 看護roo!
  • ナース専科
  • メディックメディア
医学系学会
  • 日本蘇生協議会(JRC)
  • 日本緩和医療学会(JSPM)
  • 日本救急医学会
  • 日本アルコール・アディクション医学会
その他
  • 各大学の応急手当マニュアル
  • 救急救命士養成課程テキスト

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